「良いサービスを作れば売れる」
「誠実にやっていれば人は集まる」
そう信じていても、現実は厳しいものです。特に競合がひしめく福祉・介護業界において、採用難や集客不足は多くの経営者を悩ませる共通の課題です。
しかし、三重県桑名市に「営業活動ほぼゼロ」「求人広告費をかけない」にも関わらず、利用者もスタッフも集まり続ける会社があります。
障がい者グループホーム(16ヶ所80居室)や就労継続支援B型事業所(2ヶ所)を展開する株式会社ファミリア。
代表の服部謙志(はっトリケンじ)氏は、自らを「トリケン」と名乗り、YouTubeやSNSで発信するなど、業界の「真面目で静か」なイメージを覆すユニークな経営者です。
なぜ、彼の周りには自然と人が集まるのか?
その理由は、服部氏と社員が実践する「人に喜んでもらう喜び」「人生を楽しむ」の追求にありました。また、一方で事業を全国へ拡大させるための「リファーラル(紹介)マーケティング」の極意についても、独自の実践事例を語っていただきました。

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「営業活動はするな、“コネクター”になれ」。福祉業界の異端児が実践する「リファーラルマーケティング」と「自己開示」の極意
1. なぜ、その福祉施設には「営業なし」で人が集まるのか?
1-1. 福祉業界の「常識」を疑う
福祉や介護の事業所といえば、地域包括支援センターや相談支援事業所に足繁く通い、パンフレットを置いて頭を下げる「営業回り」が一般的です。また、人材確保のために高い掲載費を払って求人媒体を利用することも常識とされています。
しかし、服部氏は「営業していない」と言います。それでも、ファミリアの運営するグループホームには口コミで利用者が集まり、採用においても「ここで働きたい」という志望者が途切れません。
1-2. 根底にあるのは「人に喜んでもらう」という原点
この現象の正体は、小手先のテクニックではありません。服部氏は幼少期、自閉症のいとこと過ごす中で「人の役に立ちたい」という原体験を持ちました。利用者の出来事を、関係者にきちんと報告をすることは「知らないことを伝えること=相手に喜んでもらえること」。この「人に喜んでもらうことが、自分の喜びである」という純粋な想いが、経営の根幹、文化の浸透にあります。
「物を売るな、人を売れ」
これは「売り込め」という意味ではなく「人として魅力的であれ」という意味です。では、なぜファミリアが営業なしで人を惹きつけるのか、その組織作りの秘密に迫ります。
2. 組織論:「楽しむ」ことが最強の集客・採用戦略
ファミリアに人が集まる理由は、意図的なマーケティングの結果ではなく、服部氏と社員の「在り方」が自然と口コミを生んでいるからに違いない。
2-1. 「古民家」は手段。差別化の本質は「人」
ファミリアの特徴の一つに「古民家を活用したグループホーム」があります。一見すると、これが差別化の要因に見えます。
しかし、服部氏は「古民家はあくまでビジネスモデル上のモノに過ぎない」と言い切ります。ファミリアが選ばれ続ける本当の理由は、そこで働くスタッフが仕事を楽しむ姿勢。時に大変な利用者のことを楽しんで対応しているからです。
2-2. 「仕事は遊べ、悪ふざけしろ」
福祉の現場は、支援の難しさや人間関係のストレスで疲弊しがちです。しかし、服部氏の教育方針は真逆を行きます。
「仕事を楽しめ。遊ぶように仕事をしろ」
これは不真面目にやれという意味ではありません。障がいを持つ利用者の方々は自己肯定感が低いことが多いため、彼らを支えるスタッフ自身が暗い顔をしていては、利用者を元気にすることなどできないからです。
服部氏を象徴するエピソードがあります。あるスタッフが遅刻をしてしまい、ひどく落ち込んでいた時のことです。普通の経営者なら叱責するところですが、服部氏はこう言いました。
「良かったじゃん! 利用者さんの気持ちがわかって最高だよ!」
障がいを持つ方の中には、時間の管理が苦手で自己嫌悪に陥る人が多くいます。「あなたもその気持ちを体験できたのだから、これでもっと良い支援ができるね」と笑って称賛したのです。
この「承認と称賛」の文化が、スタッフに「人を喜ばせる余裕」を生み出しています。
2-3. 自然発生的な口コミの連鎖
「社長がお調子者で面白い」「ここでは失敗しても逆に褒められる」
そんな風にスタッフが仕事を楽しみ、利用者に心から向き合っている姿は、必ず外部に伝わります。
「あそこのホームは雰囲気がいいよ」「あそこのスタッフさんは本当に楽しそうだ」
こうした評判が利用者やその家族、地域の相談員の間で自然な口コミとなり、営業せずとも「空きが出たら入りたい」「あそこで働きたい」という人が集まる好循環が生まれているのです。
3. マーケティング論:「売り込み」を捨てて「コネクター」になれ
ファミリア(障害者グループホーム)の集客が「在り方の結果」である一方、服部氏は現在、就労支援事業「キャリカク」の全国展開(フランチャイズ加盟店開発)にも力を入れています。ここで実践しているのが、「リファラル(紹介)マーケティング」です。
3-1. 自分が売るのではなく、他人の商品を売る
フランチャイズの加盟店を増やすには、通常なら説明会を開き、広告を打ち、営業をかけます。しかし、服部氏のアプローチはここでも独特です。
「キャリカクは売り込まない。まず、相手の商品を売る」
彼は、自らがあらゆる人と人を繋ぐ「コネクター(つなぎ役)」として振る舞います。インタビューの中で、服部氏は驚くべき実績を明かしました。自身が加盟する株式会社キャリカクが展開するフランチャイズ「就労支援B型キャリカク」を6社も成約させているのです。
加盟店が加盟開発する理由は株式会社キャリカクの小島竜太朗氏(32)を心から尊敬しているからと言います。
「人生にワクワクを」を理念とし、ミッション「日本の労働人口を上げ、国を豊かにする」、ビジョン「全国100事業所から活躍する人が生まれる」、バリュー「人生に革命を起こすSecond place」
48才の服部氏は「自分にできないことをやってくれる小島氏が本気で取り組んでいる姿勢」「若い力がこれからの世の中を変えていく」と一回り以上若い小島氏を全力応援したいとの理由から加盟店開発をしているのです。
「この事業は面白いから、あの社長に合うはずだ」という純粋なGiver(与える人)としての精神で繋ぎます。
3-2. 巡り巡って成果が返ってくる「Giverの法則」
するとどうなるか。紹介された側も、繋いでもらった側も、服部氏に強烈な「借り」と「感謝」を感じます。
「服部さんがそこまでしてくれるなら、僕も服部さんの役に立ちたい」
この返報性の原理が働き、結果として服部氏が行う加盟開発する「キャリカク」にも、予期せぬルートから紹介が舞い込んでくるのです。実際、彼が繋いだ人脈経由で「キャリカクをやりたい」という方が現れ、加盟店が増える一助になっています。
3-3. コミュニティは「組織作りの実験場」
服部氏は、BNIや守成クラブといった経営者団体にも積極的に参加していますが、単に人脈を作って仕事を獲得する場とは捉えていません。
「金銭的繋がりのない経営者同士のコミュニティを、どう盛り上げ、どう動かすか?」
この視点で参加することで、自社の組織マネジメントの実験の場として活用しています。「承認と称賛の文化」このリーダーシップをコミュニティ内で発揮することで、彼の周りのリーダーはそのリーダー以下のスタッフに同じ承認と賞賛する。すると信頼関係が生まれ、チームが強固になり、ビジネスが加速していっているのです。
4. ツール活用術:「ヒューマンストーリー」で信頼を加速させる
「人に喜んでもらう」理念の実践も、「コネクター」としての活動も、初対面の相手に信頼されなければ始まりません。そのために服部氏が活用している強力なツールが「ヒューマンストーリー」です。
4-1. 名刺交換だけでは「記憶」に残らない
異業種交流会などで100人と名刺交換をしても、翌日には「この人、誰だったっけ?」となることがほとんどです。
会社名や肩書きといった「情報(What)」だけでは、人の記憶には残りません。相手の記憶に残り、誰かに紹介したくなるためには、「その人がどんな人間か(Who)、なぜ事業を始めたのか(Why)」という「ストーリー」が必要です。
4-2. A4一枚で人生を語る「ヒューマンストーリー」
そこで服部氏は、名刺とは別に、自身の人生や想いをA4一枚にまとめた2分で読めるPDFチラシ「ヒューマンストーリー」を作成し、出会った人にSNSで渡しています。
実際に服部氏が使用しているシートには、以下のような要素が写真付きで掲載されています。
キャッチコピー: 「人の成長がご褒美」
- 原体験(Why)
- 1977年生まれ。福祉の道を志したきっかけは、5歳下のいとこの存在。
自閉症のいとこと過ごし、「人の役に立ちたい」という思いが芽生えた中学時代のキャンプ体験。 - 人柄(Character)
- 「話し出したら止まりません。村一番のお調子者です」
「3度の飯より人が好き。熱い男です」 - ビジネスの原点
- 地元での挑戦、障がい者グループホーム不足を知り「自分がやろう」と決意した経緯。
4-3. 弱みも含めた「自己開示」が共感を生む
このシートの優れた点は、綺麗な経歴だけでなく、自身の「原点」や「人柄(お調子者であること)」をさらけ出している点です。「自己開示」こそが、初対面の相手との距離を一瞬で縮め、信頼関係を築く鍵となります。
これを読んだ相手は、服部氏のことを単なる「福祉施設の社長」ではなく、「熱い想いを持った、ちょっと面白そうな人間」として認識します。「この前、お茶目な社長に会ってさ。いとこの影響で福祉始めたらしくて、すごく熱い人なんだよ」
そんなふうに、第三者が誰かに説明するための「ネタ」を提供すること。これこそが、紹介を生むツールの役割なのです。
5. まとめ:明日からできる「コネクター」への第一歩
服部謙志氏の事例から学べるのは、「自分の利益よりも、相手の喜びを優先する」というシンプルな真理です。
- ⚫︎ファミリアの現場では、利用者やスタッフの喜びに全力で向き合うことで、自然な口コミを生み出す。
- ⚫︎キャリカクの展開では、他社のビジネスに貢献するコネクターとして振る舞うことで、信頼と紹介の輪を広げる。
どちらも根底にあるのは、「人の役に立ちたい」という服部氏のぶれない軸です。「営業が苦手だ」「集客に疲れた」という方こそ、まずは目の前の人を喜ばせること、誰かと誰かを繋ぐことから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな「Giver」としての行動が、やがて大きな成果となって返ってくるはずです。
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服部氏は自分のストーリーだけでなく出会った代表者のストーリーを作ることをしています。服部氏がヒアリングして時にブランディングのアドバイスまでもらえ、フルオリジナルデザインで5.5万円(税込)で提供します。 「商品を売る前に人売れ」会社やサービスを作った"あなた"には人を惹きつける魅力がある。経営者の想いを2分で読める自己紹介シートにまとめます! どんな人生を送ったのか、苦しかった過去もそれを乗り越えてきたから今がある。最高のパーソナルブランディングツールを作ってみませんか? 詳細は下記の「就労継続支援B型事業所 キャリカク」までお問い合わせください。
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