売れる商品名はあえて「クソダサい」？ネーミングの考え方を徹底解説

1. なぜ売れない？商品名の考え方でよくある失敗パターン

商品名の考え方で失敗する企業には、共通のパターンがあります。あなたの商品名は大丈夫か、チェックしてみましょう。

1-1. 「おしゃれ」「かっこいい」を追求する自己表現の罠

英語の単語や洗練された響きの言葉を並べた「おしゃれ」な商品名。一見すると魅力的に感じますが、これは非常に危険なワナです。なぜなら、制作者の自己満足に過ぎず、肝心の消費者には「何の商品か」が全く伝わらないからです。消費者は意味のわからない名前の商品に興味を持つことはありません。

1-2. 意味やストーリーを込めすぎる誤解

商品開発に込めた熱い思いや感動的なストーリー、企業の歴史…。これらを商品名に反映させたいという気持ちは理解できます。しかし、消費者は、あなたの個人的なストーリーよりも、自分の悩みを解決してくれるかどうかにしか興味がありません。 長くて複雑な名前は、顧客の記憶に残らず、結局は誰にも覚えてもらえません。ストーリーは別の場面で語るべきであり、商品名はシンプルである必要があります。

1-3. オリジナリティを重視しすぎた難解な造語

他社との差別化を意識するあまり、独創的（オリジナリティ）であろうとして、誰も知らない「造語」を商品名にしてしまうケースもあります。これも失敗の典型的なパターンです。ユーザーは、その名前から商品の機能やメリットを一切イメージできません。結果として、興味を持ってもらえず、スルーされてしまいます。

1-4. 大手企業の真似が通用しない理由

「でも、大手企業はおしゃれな造語の商品名で成功しているじゃないか」と思うかもしれません。確かにそうです。しかし、それは潤沢な広告宣伝費を投下し、テレビCMや雑誌広告などで大量に露出することで、強制的に消費者の記憶に刷り込んでいるからです。 予算の限られる中小企業や個人事業主が同じ戦略を取るのは無謀です。限られたリソースの中で成果を出すためには、異なる考え方でネーミングを行う必要があります。

2. 売れる商品名の「考え方」の基本原則

では、売れる商品名はどのような考え方で作ればよいのでしょうか？ ここでは、4つの基本原則を解説します。

2-1. 原則①：「売れる」から逆算する

多くの人は、「素敵な名前を決めてから、どうやって売ろうか考える」という順番で物事を進めがちです。しかし、これは間違いです。 正解は、「どうすれば売れるか？」を最初に考え、そこから逆算して商品名を決定することです。売れるという目的を達成するための手段として、ネーミングを捉えましょう。

2-2. 原則②：顧客（他人）が使う言葉で考える

商品名は、あなたが呼びたい名前ではありません。顧客が使う言葉である必要があります。特に意識すべきは、顧客が「友人に紹介する時」や「SNSやネットショップのレビューで書く時」に、どのような言葉を使うかです。 難しい言葉や長い名前は口コミで広まりません。顧客が自然に口にしやすく、伝えやすい 単語や表現を選ぶことが重要です。

2-3. 原則③：検索キーワードを意識する

現代の消費者は、悩みや欲求が生じた際、インターネットで「検索」するという行動を取ります。この検索される言葉、つまり「検索キーワード」を商品名に含めることは、Webマーケティングにおいて非常に強力な武器となります。 顧客が使うであろう検索キーワードを商品名に入れることで、SEO（検索エンジン最適化）で有利になり、広告を出稿した際のクリック率向上も期待できます。

2-4. 原則④：「分かりやすさ」が記憶を生む（ユニクロの事例）

「カビが生えないお風呂マット」
「感動パンツ」（ユニクロ）
「猫と暮らす人のための掃除しやすいラグ」

これらの商品名は、決して「おしゃれ」ではありません。むしろ「クソダサい」と感じる人もいるでしょう。しかし、これらの名前は「何の商品で、どんなメリットがあるのか」が一目で分かります。 この「分かりやすさ」こそが、顧客の記憶に残り、指名買いに繋がるのです。あなたが「かっこいい」と思う名前と、顧客が「分かりやすい」と感じる名前は違うということを強く認識する必要があります。

3. 【実践】売れる商品名を創る！3つの具体的アプローチ

ここからは、具体的に売れる商品名を作成するための3つのアプローチを解説します。

3-1. アプローチ①：検索キーワードをそのまま商品名にする方法

最もシンプルで、かつ効果的な方法がこれです。顧客が検索するであろうキーワードをリサーチし、それを商品名に採用します。

キーワードのリサーチ方法:

• Googleキーワードプランナー
• Googleが無料で提供するツール。特定のキーワードの月間検索ボリュームを調査できます。
• ラッコキーワード
• サジェストキーワード（関連キーワード）を一括で取得できる便利なツール。顧客の潜在的なニーズを把握できます。
• キーワードサーファー
• Google Chromeの拡張機能。検索結果画面に関連キーワードや検索ボリュームを表示してくれます。
• AmazonやYouTubeの検索窓
• ユーザーのリアルな検索ニーズの宝庫です。商品に関連する単語を入力し、表示されるサジェストを参考にします。

事例

• ● ただの「Tシャツ」ではなく、「汗染みが目立たない Tシャツ」
• ● ただの「炊飯器」ではなく、「一人暮らしにぴったりな コンパクト炊飯器」

この方法により、Webサイトやネットショップへの自然検索からの流入が見込めるだけでなく、広告のクリック率向上にも繋がります。

3-2. アプローチ②：顧客の「問題・悩み」をそのまま商品名にする方法

顧客が抱える具体的な「問題」や「悩み」を言語化し、それを商品名にするアプローチです。「そうそう、これで困ってたんだ！」と強烈な共感を呼び、自分ごととして認識させることができます。Z世代や主婦層に特に刺さりやすい 傾向があります。

事例:

• ● 「足の匂いが気になる人の靴下」
• ● 「急な来客でも部屋が片付いて見えるラグ」
• ● 「玄関の匂いが気にならなくなるスプレー」
• ● 「リモートワークで腰が痛い人のための椅子」

アメリカの広告調査会社「WordStream」の調査によると、Google広告において「問題提起型」の広告文は、「情報提示型」よりもクリック率が1.7～2.2倍高いというデータもあります。これは、物販だけでなく、店舗のメニュー名や無形商品（コンサル、セミナー）のネーミングにも絶大な効果を発揮します。

3-3. アプローチ③：「短縮ワード×属性」でオリジナリティを出す方法

どうしてもオリジナルの名前を付けたい、少しはおしゃれな要素を入れたいという場合は、意味不明な造語ではなく、顧客が意味を推測できる「分かりやすい造語」を作成しましょう。

作り方のコツ

1. ● 商品の特徴やベネフィットを表すキーワードを短縮する。
2. ● ターゲットや用途を表す言葉（属性）と組み合わせる。

事例

• ぬくブーツ
• 「ぬく（温かい）」＋「ブーツ」 → 足先が冷えやすい女性向けの防寒ブーツだとイメージできます。
• 宅トレマット
• 「宅（自宅）」＋「トレ（トレーニング）」＋「マット」 → 自宅でトレーニングするためのマットだと理解できます。

ポイントは、名前を聞いただけで、どんな商品で、誰のためのものかが何となくイメージできることです。「この商品名、どういう意味ですか？」と説明が必要な名前は、顧客の思考に負担をかけるため避けるべきです。

4. 商品名を決める際の注意点と最終チェック

商品名のアイデアが出たら、最終決定する前に以下の項目を必ずチェックしましょう。

4-1. 覚えやすさと語感の良さ

いくら 分かりやすくても、長すぎたり、発音しにくかったりする名前は記憶に残りにくく、口コミでも広まりません。口に出して何度も言ってみて、語感が良いか、スムーズに言えるかを確認しましょう。

4-2. 競合商品との類似性

ネーミングが競合商品と似すぎていると、顧客が混同してしまったり、独自性が失われたりします。商標の問題に発展する可能性もあるため、事前に競合商品の名前をしっかりリサーチしましょう。

4-3. 商標登録の可能性と調査の必要性

決定した商品名が、他社によってすでに商標登録されていないか調査する必要があります。特許情報プラットフォーム（J-PlatPat）などで無料で調査できますが、安心のためには弁理士などの専門家に依頼することも検討しましょう。 自分が考えた名前を長く使っていくためには、自分で商標登録を申請することも重要な戦略です。

4-4. 文字数の考慮（SNSでの表示など）

Twitter(現X)やInstagramなど、SNSでは表示される文字数に制限があります。長すぎる商品名は途中で切れてしまい、メッセージが正しく伝わらない可能性があります。SNSでの発信も視野に入れ、簡潔なネーミングを心がけましょう。

4-5. 説明が必要な名前は避ける

繰り返しになりますが、「この名前はどういう意味ですか？」と説明が必要になるような名前は、原則として避けるべきです。商品名は、それ自体がセールスマンの役割を果たすべきです。一瞬で価値が伝わる名前を追求しましょう。

5. まとめ：「顧客視点」こそが売れる商品名の考え方のすべて

商品名やサービス名は、単なる記号ではありません。顧客との最初のコミュニケーションであり、企業の売上を左右する重要なマーケティングツールです。 経営者や開発者の「思い」や「かっこよさ」を追求した自己満足なネーミングは、顧客の心には響きません。その名前に込めたストーリーや意味は、誰にも伝わらない可能性が高いのです。 売れる商品名の考え方の本質は、徹底的な「顧客視点」にあります。

• ● 顧客はどんな言葉で検索するのか？
• ● 顧客はどんな悩みや課題を抱えているのか？
• ● 顧客が記憶しやすく、友人に伝えやすい 言葉は何か？

今日からあなたも「クソダサい」と思われることを恐れず、顧客の心に直接響く「検索キーワード」や「悩み」を商品名に採用してみてはいかがでしょうか。 一見すると不格好に見えるその名前こそが、顧客の記憶に残り、口コミを生み、リピーターを育て、あなたのビジネスを成功に導く最強の名前になるはずです。 まずは、自社の商品名を顧客視点で見直してみることから始めてみましょう。