【2025年版】健康経営優良法人認定のメリットを徹底解説！中小企業が優位に立つ戦略

1. 健康経営とは？なぜ今、企業に不可欠なのか

1-1. 健康経営の定義：法令遵守を超えた「戦略的投資」

健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題の一つとして捉え、健康の保持・増進に向けた取り組みを戦略的に実践することです。 これまでの「健康管理」は、健康診断の実施など、労働安全衛生法などの法令遵守を目的とするケースが多く見られました。そこには、従業員の健康を考えること自体よりも、罰金などのリスクを回避する意味合いが強かったと言えるでしょう。高額な費用をかけながらも、本質的な健康増進や生活習慣の改善に繋がる施策が十分に行われていない企業も存在していました。 しかし、健康経営は視点が大きく異なります。従業員の健康を増進することが、モチベーション向上や生産性向上に直結し、将来的に企業に新たな価値をもたらすという認識に基づいています。こうした背景から、健康経営はもはや単なるコストではなく、会社の成長を支えるための「投資」として位置づけられ、取り組む企業が増加しています。

1-2. 従来の健康管理との決定的な違い

1-3. 企業が健康経営を重視すべき4つの社会情勢変化

健康経営が近年重要視される理由として、日本を取り巻く4つの社会情勢の大きな変化が挙げられます。 日本では少子高齢化が急速に進行しており、15歳から64歳の生産年齢人口は急減しています。1995年には約8,700万人だったのが、2030年には約6,875万人まで減少する見込みです。このような状況において、企業が少ない人数で今までと同じ、あるいはそれ以上の成果を出すためには、従業員が健康で生産性を高めることが不可欠です。人材確保が困難な現代において、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化することが組織の課題解決に直結します。 2025年4月からは、中小企業を含む全ての企業において、定年退職が60歳から65歳に引き上げられることが義務化されます。企業は高齢者の就労促進を進めることで労働力を確保する必要がありますが、高齢の従業員ほど健康に不調をきたしやすくなります。高年齢層が健康で快適に働ける環境を整備することは、企業にとって急務の課題であり、働きがいの向上にも繋がります。 昨今「働き方改革」という言葉が広まり、企業の働き方が大きく見直されています。従業員に十分な休みを与えずに長時間労働を強いることが常態化している企業では、士気が低下し、健康状態が悪化します。 仕事ばかりに時間を費やすと、私生活や家庭の時間が犠牲になり、未婚化や少子化が進行することも懸念されています。従業員エンゲージメントを高めるためにも、柔軟で多様な働き方を支援し、ワークライフバランスを重視する企業姿勢が求められます。 実は、心身の健康状態や生活習慣などで健康リスクを多く抱えている従業員は、健康リスクが少ない従業員に比較して、労働生産性が約3倍も低くなることが明らかになっています。これをコストに換算すると、1人当たりの生産性の損失額は年間約100万円にもなります。もし健康リスクを抱える従業員が100人いれば、年間1億円単位の損失が発生している計算になります。この数値は、健康経営が単なる「良いこと」ではなく、企業の業績に直結する重要な経営課題であることを明確に示しています。

2. 経営リスクを数値化！「アブセンティーズム」と「プレゼンティーズム」を理解する

労働生産性の損失が年間約100万円にも上る可能性があることを理解したうえで、その損失額をどのように測定し、具体的な課題を把握するのかを知る必要があります。ここでは、労働生産性の損失を測定するための2つの主要な指標について解説します。

2-1. アブセンティーズムとは？：業務が行えない「欠勤・休職」の損失

アブセンティーズム（Absenteeism）とは、心身の不調が原因で、遅刻や早退、欠勤、休職など、従業員が業務自体を行えない状態のことを指します。物理的に職場に不在であるため、その損失は比較的分かりやすい形で現れます。例えば、人員の補充や他の従業員への業務の割り振りなど、直接的なコストや手間が発生します。

2-2. プレゼンティーズムとは？：健康問題による「生産性低下」の隠れた損失

プレゼンティーズム（Presenteeism）とは、アブセンティーズムとは異なり、従業員が職場には出勤しているものの、健康問題が原因で生産性が低下している状態を指します。例えば、仕事を休むほどではないけれど、花粉症や腰痛、頭痛などの症状で集中できず、業務効率が下がっている状態がこれに当たります。体調が優れない状態で勤務を続けることは、従業員の働きがいにも影響を与えます。

2-3. 【衝撃の事実】健康関連コストの約8割は「プレゼンティーズム」によるもの

ある調査によると、日本企業における健康関連の総コストを推計した結果、驚くべき事実が明らかになりました。それが、健康関連コストの約8割が「プレゼンティーズム」によるものであり、アブセンティーズムは4.4%、医療費は15.7%に過ぎなかったということです。 このデータが示すように、企業にとって最大のコスト要因は、欠勤や休職といった目に見える損失ではなく、日常的な健康問題に起因する「隠れた生産性低下」であるプレゼンティーズムなのです。従業員のパフォーマンスを最大化し、組織を強化するためには、このプレゼンティーズムの測定と改善が不可欠です。

2-4. 東京大学「東大1項目版」でプレゼンティーズムを測定する方法

プレゼンティーズムを測定する方法はいくつかありますが、ここでは東京大学が開発した「東大1項目版」をご紹介します。この方法は非常にシンプルで、たった1つの設問に答えるだけで測定が可能です。

• 設問：
• 「病気やケガがない時に発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自分の仕事を評価してください。」
• 計算式：
• 100% － 回答値 ＝ プレゼンティーズム損失割合

日本の平均は84.9%と報告されており、約15.1%の労働生産性を健康問題が原因で失っていることになります。

【企業事例：三菱自動車】 三菱自動車は、2024年度の東大1項目版の結果が81%でした（日本人平均の84.9%より低い数値）。しかし、この測定を行ったことで、健康経営の優先順位が明確になり、日本人平均の85%を目標に改善に取り組んでいます。このように、数値で現状を把握することが改善の第一歩となります。

3. 健康経営に取り組むことで得られる4つの大きなメリット

健康経営は単なるコストではなく、企業の成長を支える「投資」です。具体的にどのようなメリットが得られるのか、4つの視点から解説します。

3-1. メリット①：労働生産性の向上と企業活力の増大

従業員が心身ともに健康であれば、仕事への集中力が高まり、業務効率も向上します。プレゼンティーズムの解消は、従業員のパフォーマンスを最大化し、企業全体の労働生産性を向上させます。活力に満ちた職場環境は、新しいアイデアやイノベーションを生み出す源泉ともなります。

3-2. メリット②：離職率の低下と優秀な人材の定着

慢性的に健康やメンタルに不調を抱える従業員が多い職場では、必然的に離職率が高くなります。健康経営を推進することで、従業員の健康が改善され、職場への満足度が向上し、離職率の低下や優秀な人材の定着を促進できます。これにより、求人広告など新たな従業員を採用するためのコストや教育コストを圧縮することが可能になります。

3-3. メリット③：企業イメージの向上とブランド価値の強化

健康経営に注力している企業は、求職者にとって「働きやすい」「社員を大切にする」職場というポジティブな印象を与えます。その結果、応募率の向上が期待できます。

また、サステナビリティ経営が注目される中、健康経営はその一環として企業の社会的責任を果たす取り組みとして評価され、企業イメージの向上やブランド価値の強化にも繋がります。第三者認定を受けることで、自社のブランドを「見える化」し、社外からの信頼性を高めることができます。

3-4. メリット④：認定制度によるインセンティブとPR効果

健康経営に取り組み、一定の基準を満たせば、公的機関からの権威性の高い認定を取得することができます。健康経営は自社内のみで推進するだけでも価値はありますが、認定を目指すことでPR効果が高まり、企業の信頼性にも繋がります。

例えば、「健康経営優良法人」に認定されると、公式ロゴマークを企業のPRや求人広告、営業資料などで使用できます。一部の自治体では公共調達や入札時に加点されたり、金融機関や保険会社から金利優遇や保険料割引といったインセンティブを受けられる場合もあります。せっかく取り組むなら、ぜひ認定制度の取得を目指してみてください。

4. 企業価値を高める！健康経営に関する2つの公的認定制度

健康経営への取り組みを「見える化」し、社外からの評価を高めるための公的認定制度は、企業価値を大きく向上させるチャンスです。代表的な2つの制度をご紹介します。

4-1. 健康経営優良法人認定制度（経済産業省・日本健康会議）

健康経営優良法人認定制度は、健康経営に取り組む企業を公的に顕彰する制度です。経済産業省と日本健康会議が中心となり、企業の健康経営の見える化を促進することを目的に運営されています。

• 認定基準とロゴマークの活用、公共調達・金融機関での優遇
• 認定されると企業は「健康経営優良法人」のロゴマークを利用できる他、経済産業省や日本健康会議のWebサイトで社名が公開されます。これらの「お墨付き」は、求職者や取引先への印象を高め、信頼性を強化します。さらに、自治体からの公共調達や入札における加点、金融機関からの金利優遇、保険会社からの保険料割引といった実務的なメリットも得られます。
• 大規模法人部門と中小規模法人部門の区分
• 健康経営優良法人には、大企業を対象とした「大規模法人部門」と中小企業を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門があります。これにより、企業規模を問わず健康経営に取り組むことが可能です。認定数は年々増加しており、2023年時点では大規模法人部門で2,676社、中小規模法人部門で12,0社が認定されています。
• 「ホワイト500」「ブライト500」とは？
• 特に優れた活動を行った上位500社には、大規模法人部門で「ホワイト500」、中小規模法人部門で「ブライト500」とそれぞれ継承される制度もあります。この上位認定を取得するためにはより厳しい要件を満たす必要があるため、企業にとっては一つのステータスとなり、採用市場や営業面での強力なアピール材料となります。

4-2. 健康経営銘柄（経済産業省・東京証券取引所）

健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定し認証する制度です。優れた健康経営に取り組んでいる上場企業のみが対象となるため非常に狭き門です。 この銘柄に選定された企業は、従業員の生産性や活力が向上していることが多く、長期的な業績アップや株価向上が期待されます。そのため、投資家へのアピール材料としても注目されます。健康経営銘柄に選ばれることは、企業の健康経営の質の高さを示す証であり、投資家やステークホルダーに対して大きな信頼感を生み出します。基本的に1業種1社のみ選定されるため、非常に名誉ある認定と言えるでしょう。

5. 今日から実践！企業ができる健康増進の具体策6選

健康経営優良法人の認定基準などを踏まえ、中小企業でも今日から実践できる健康増進の具体的な取り組みを6つご紹介します。これらの施策は、従業員の健康を守るだけでなく、企業の生産性向上や離職率低下にも直結します。

5-1. 従業員の「健康診断受診率」の向上

健康診断は労働安全衛生法で年1回の実施が義務づけられており、違反すると罰金が課されます。多くの企業で健康診断を提供しているでしょうが、忙しさを理由に受診しない従業員も存在します。

• 具体策：
• 未受診者への声かけやメールによる通知、書面での案内を徹底する。受診しやすい時間帯の設定や、企業が費用を一部負担するインセンティブの提供も有効です。

健康経営は、非喫煙者が快適に働ける環境を整備することも重要な要素です。

5-2. 「分煙の徹底」と「喫煙率の低下」への取り組み

喫煙者は非喫煙者と比較して寿命が10年も短くなることが明らかになっており、副流煙による健康被害は周囲の非喫煙者にも悪影響を及ぼします。

• 具体策：
• 喫煙可能な時間帯の設定や喫煙室の設置、禁煙治療のサポートを提供する。従業員の喫煙率に具体的な数値目標を設け、禁煙を奨励するキャンペーンなども有効です。

健康経営は、非喫煙者が快適に働ける環境を整備することも重要な要素です。

5-3. 「メンタルヘルスマネジメント」の導入と相談窓口の設置

近年、仕事のストレスが原因でメンタルヘルスの不調を訴える従業員が増加傾向にあります。メンタルヘルスのケアは、従業員の生産性や離職率に直結する重要な課題です。

• 具体策：
• 従業員が50人以上の企業で義務化されている「ストレスチェック」を実施する。社内相談窓口や外部のEAP（従業員支援プログラム）を設置し、専門家（産業医、心理士、産業カウンセラーなど）による相談を可能にする。メンタルケアのセミナーを開催し、セルフケアの知識を提供することも大切です。

5-4. 「女性が働きやすい職場作り」への配慮と支援

女性労働者の増加が確認されている中、女性が心身ともに健康的に働くためには、女性特有の症状や妊娠・出産など、男性とは異なる視点からの配慮が必要です。

• 具体策：
• 婦人科検診や生理休暇の付与。育児や介護を両立できるよう、業務時間短縮や柔軟な勤務形態（リモートワーク、時短勤務など）の選択肢を提供する。相談窓口の設置も重要です。

多様な人材が活躍できる環境は、企業の成長を促進します。

5-5. 「社内コミュニケーション」の促進と心理的安全性確保

2022年の労働安全衛生調査によると、職場のストレスの約30%が対人関係を理由としています。従業員同士のコミュニケーションが不足し、心理的安全性が確保されていない職場では、同じ業務量でも疲労度が軽減されず、メンタルヘルスにも悪影響を与えます。

• 具体策：
• フリーアドレスの導入や社内ブログ、チャットアプリといったコミュニケーションツールの活用促進。昼食会やチームビルディングイベントの開催も有効です。

活発なコミュニケーションは、従業員の連帯感を高め、組織全体の活力を増大させます。

5-6. 「食生活の改善」と「運動促進」のサポート

食事と運動は健康状態に直結する重要な要素です。従業員に任せきりにせず、企業が積極的にサポートする姿勢が求められます。

• 具体策：
• 健康に配慮した食事が取れる制度の導入（社員食堂でのヘルシーメニュー提供、食事補助など）。スポーツジムの料金補助や社内ウォーキングイベントの開催。「やさいのキラメキ」のような職場に新鮮な野菜を届けるサービスの導入も有効です。

健康的な食事や適度な運動の推進は、長期的な視点で見ても疾病予防やパフォーマンス向上に寄与し、健康経営の成功に欠かせない要素です。

6. 【中小企業向け】健康経営優良法人認定を最大限に活用するPR戦略

健康経営優良法人の認定を取得することは、中小企業にとって大企業に引けを取らない強力な武器となります。単なる「お墨付き」で終わらせず、そのメリットを最大限に活かすPR戦略を構築しましょう。

6-1. 公式ロゴマークは強力な「信頼の証」：Webサイトや名刺への掲載

健康経営優良法人に認定されると、経済産業省と日本健康会議が発行する公式ロゴマークを利用できます。このロゴマークは、国が認めた「健康優良企業」であることの強力な証です。

• 活用方法：
• 自社のWebサイト、採用ページ、名刺、会社案内資料、メール署名など、あらゆる顧客や求職者、取引先が目にする場所に積極的に掲載しましょう。

視覚的に信頼性とブランド価値を高める効果は絶大です。

6-2. 採用活動での効果的なアピール方法：求人票、会社説明会、SNS活用

健康経営優良法人の認定は、採用難の時代における強力な採用ツールです。

• 求人票・採用サイト：
• 認定を受けていることを明確に記載し、公式ロゴマークを掲載しましょう。「国が認めた働きやすい職場」であることを強調することで、特に若年層や女性の応募者へのアピール力が高まります。
• 会社説明会・面接：
• 健康経営への取り組みを具体的な事例を交えて説明しましょう。「ストレスチェック後の個別面談」「婦人科検診の費用補助」など、リアルな取り組みを伝えることで、求職者は安心感を抱きやすくなります。
• SNS活用：
• 社内ウォーキングイベントの様子や社員食堂のヘルシーメニュー写真など、健康経営の取り組みをSNSで積極的に発信しましょう。従業員が活き活きと働いている姿は、求職者にとって最も魅力的な情報です。

6-3. 営業・広報活動での活用術：顧客への安心感、メディアへの露出

健康経営優良法人の認定は、顧客や取引先への営業・広報活動においても強力な武器となります。

• 営業資料・プレゼンテーション：
• 企業の信頼性を示す要素として認定を紹介しましょう。「従業員を大切にする企業は、顧客も大切にする」というポジティブな連想を促し、安心感を与えます。特にBtoBの取引では、企業の健全性を示す指標としても有効です。
• メディアへの露出：
• 認定を受けたことをプレスリリースとして発信しましょう。地域の新聞やWebメディアが取り上げてくれる可能性があります。「健康経営」をテーマにした講演やセミナーの依頼に繋がることも期待できます。

6-4. 認定取得後の「継続的な情報発信」でブランド価値を強化

健康経営優良法人の認定は一度取得したら終わりではありません。毎年更新の申請が必要であり、継続的な取り組みが求められます。 この継続こそが、企業のブランド価値をさらに強化します。「〇年連続認定取得」といった実績は、揺るぎない信頼を構築します。認定後も具体的な健康増進の取り組みや成果を社内外に発信し続けることで、企業の健康経営への本気度を示し、永続的なブランドとしての地位を確立しましょう。

7. まとめ：健康経営優良法人認定で、あなたの会社も「選ばれる企業」へ

健康経営は、従業員の健康管理を経営課題と捉え、戦略的に実践することで、企業に多大なメリットをもたらします。単なる法令遵守を超え、労働生産性の向上、離職率の低下、採用力の強化、企業イメージの向上、そして公的認定制度によるインセンティブの獲得など、その効果は多岐にわたります。

プレゼンティーズムやアブセンティーズムといった隠れたコストを数値で把握し、健康診断の受診率向上、メンタルヘルスケアの充実、女性が働きやすい職場作り、社内コミュニケーションの促進といった具体的な取り組みを実践することが重要です。

帝国データバンクの調査結果が示す通り、健康経営は売上高の増加や倒産リスクの低減に明確に貢献します。これからの時代、健康経営は企業が持続的な成長を実現し、競争力を強化するための必須条件です。

中小企業の皆様も、今日から健康経営に前向きに取り組むことで、従業員が活き活きと働き、会社が社会から評価される未来をぜひ実現してください。